様々な機能効果をもたらす静電植毛
用途の可能性は無限大!
静電植毛は非常にシンプルな技術ですが、植毛によってもたらされる機能効果は実に様々。素材の機能性を高め、今までにない用途の製品を生み出す可能性に満ちています。
植毛加工の原理
あらかじめ加工する対象物に接着剤を塗布し、植毛用のナイロン繊維(パイル)は、1ミリの数分の1という単位で細かくカットしておきます。この両者を直流高電圧環境下に置き、静電界の作用によって対象物にパイルを垂直に吸着させます。その後乾燥・熱処理を施し、パイルを固定します。植毛加工の品質は気温・湿度・対象物の形状で微妙に変化することから、データに基づいた細かな調整力が問われます。
植毛加工の機能効果
ビロードのような風合いや高級感を演出する装飾効果はよく知られていますが、それ以外にも様々な機能効果があります。例えば断熱、反射防止、結露防止など、目的に応じた機能性をプラスできる静電植毛は、OA機器や精密機械、家電製品の部品などにも使用され、私たちの暮らしの身近なところで機能効果を発揮しています。
保護効果 | 破損・傷防止 |
熱的効果 | 断熱・遮熱・防熱(寒)・保温 |
音響効果 | 吸音・防音・遮音・制震・消音 |
光学効果 | 遮光・反射防止・乱反射防止 |
吸水・吸湿効果 | 吸水・保水・結露防止・濾過・通気 |
力学効果 | 摩擦力・弾力・刷毛性・滑り防止・摩擦低減 |
装飾効果 | 質感・量感・触感・美的表現 |
保護効果
植毛パイルの繊維の長さがクッションになり、大切な商品が壊れることを防ぎ、傷から守る効果があります。
熱的効果
植毛パイルの長さで空気の層を作り、直接熱を伝えない効果があります。高温の部分には不燃性の繊維を使用します(通常150℃程度まではナイロン繊維を使用)。
音響効果
植毛パイルには音の反響を押える効果があります。また、植毛パイルの長さで空気の層ができることで音を押え、直接振動なども伝えません。
光学効果
植毛パイルで光を押えることができます。
吸水・吸湿効果
植毛パイルには吸水効果があり、水を毛管現象で吸上げることができます。パイルの長さが長いほど保水量が多くなります。また、空気の層により熱を直接伝えず、結露防止にも。さらにはフィルターの役目をさせることもできます。
力学効果
植毛パイルの毛先で摩擦低減を行うことができます。植毛パイルの繊維の腰により、弾力を得られる効果もあります。また、植毛パイルはブラシと同じ効果が得られます。
装飾効果
植毛繊維(パイル)は様々な色に染色することが可能です。さらに植毛繊維には多種の種類・太さ・長さがあり、用途に応じて選択することができます。
植毛加工の用途例
素材に様々な機能効果をプラスし、機能性を高める静電植毛の用途例は、電気機器や精密機器をはじめ、あらゆる分野に広がっています。この用途例はあくまでも現段階のもの。静電植毛は、新たな用途への可能性を秘めた、市場にないものを創り出すことができる加工技術と言えます。
電気機器 精密機器 機械機器 自動車 家具
美術工芸 繊維 雑貨 玩具 紙 印刷
保護機能性
破損、傷防止の効果から、微細な部品や複雑な構造を持つ精密機器をはじめ、食器や高級品などのケースに使用されています。
- 精密機器ケース
- カメラケース
- 食品ケース
- 眼鏡ケース
- 宝石ケース
熱的機能性
電気こたつの電熱部のカバーやファンヒーターの吹き出し口に植毛されているのは火傷防止のためです。防熱・保温機能の面からファブリックにも有用です。
- 電気こたつカバー
- 複写機熱源のカバー
- ファンヒーター吹き出し口
- カーテン
- 植毛毛布
- 壁紙
音響的機能性
音と振動に関わる製品に使用されています。音楽を楽しむための部品や空間はもちろん、異音防止にも植毛加工は欠かせません。
- スピーカーフレーム・ネット
- マイクロホン
- カバーのびびり止め
- 異音防止材
- 自動車のBOX内側
- イベントホール内壁(消音)
- オルゴールBOX
- 置物の底
光学的機能性
植毛加工の遮光機能は照明機器やカーテンなどに多く用いられています。またカメラなどの光学系機材の内部には、乱反射防止や遮光を目的に植毛加工されています。
- 照明機器の遮光
- レンズフード
- カメラ内部(乱反射防止)
- 暗室用カーテン
- サンバイザー
気体・液体特性
吸水・保水・結露防止・濾過・通気といった特性から、化粧用パフをはじめ、エアコン関係、屋根、フィルターなどに採用され機能性を発揮しています。
- 化粧用パフ
- エアコンの吹き出し口ルーバー
- エアコンのダクト
- サウナ
- 新幹線ホームの屋根
- 各種フィルター
- 汚水処理用部品
- 建具チャンネル
- ドアモール
力学的機能性
植毛による摩擦力強化でOA機器のロール部品やスリップ防止品に。刷毛としての機能からペイント関係やブラシ類に。駆動ローラーの滑り防止にも役立っています。
- OA機器ロール部品
- OA機器クリーニングロール
- ペイントロール
- ブラシ類
- 稼働ローラー
- 化粧用具
- スリップ防止品
- ウェザーストリップ
- ウインドウチャンネル
- ゴム手袋内部
- パッキン材
装飾的性質
質感や触感が特に重視される化粧用パフを筆頭に、高級感を演出する効果やアート的な表現力から、製品ケース、ファッション、玩具、インテリア、文具へと用途が広がっています。
- 製品ケース
- 化粧用パフ
- 靴・サンダル
- Tシャツプリント加工
- 衣類(婦人服・その他)
- マーク類のプリント
- 玩具・置物・文具類
植毛加工例:化粧用パフができるまで
フロック加工とは、どのようなプロセスで行われるのでしょう。ここでは当社の工場から、製品の中でも最もスタンダードな化粧用パフを例にとって、その手順をご紹介します。技術の核となる処理の部分はお見せ出来ませんが、大体の流れはご理解いただけるはずです。
フロック加工設備に、あらかじめ所定の厚さにカットされたウレタンシートを取り付けます。当社ではこれ以前の原料のスライスの段階から、製品づくりに取り組んでいます。
シートにパイルを定着させるための接着剤を塗付していきます。素材の材質や加工時の気温・湿度によって、接着剤にも微妙な調合や濃度の調整が必要となります。
素材とパイルに電気的処理を加えて、繊維を対象に吸着。固定のための乾燥・熱処理を行って、フロック加工の完了です。
植毛加工済みのウレタンシートを刃型で溶断をし、製品としての所定のサイズにカットします。溶断後その場でシートから製品を取り外します。多品種少ロットの生産が主力の為、この手順の多くは手作業です。これで一通りの作業となり製品は完成です。この裁断工程でも、当社ならではの特殊な技術が介在しています。
製品の仕上がりや手触りに問題はないか、ひとつひとつ丹念にチェックし、当社の製品は、お客様のお手元へと届けられています。